初めて現地を訪れたとき、ちょうどダムの基礎工事をやっていて、そこで働く人間がアリのように見えた。そのダムのコンクリート量は、この管理所一棟分以上のコンクリートを毎日打つそうだ。ダムをつくるというのはエライことだ、大自然に抵抗するということはこういうことなんだ、と思った。ダイナミックなエネルギーに圧倒されると同時に、人間はなんと愚かなことをするのかとも感じた。
微力な人間が、神という大自然に立ち向かう姿を、爪を立てて岩にしがみつき、抵抗する姿を思い描いた。
内部空間は地球規模の水の流れを一枚の絵にしたエッシャーの作品のような建築ができないかと思い、見るものにとって天と地をどちらとも受け取れるようにした。
ぼくは現代アートは見た瞬間にある記憶を呼び起こす芸術だと思っているが、この場所にはそういうものが有効だろうと思った。