木造+鉄骨造 地上1階
こども環境学会賞 デザイン奨励賞(2020)
iF DESIGN AWARD(2020)
グッドデザイン賞(2019)
本計画は、大正7年から続く歴史ある幼稚園の創立100周年記念事業です。幼稚園の隣地に建つ築約100年の木造家屋を土地ごと取得して遊戯室棟(遊戯室兼ランチルーム)として再生させるリファイニング計画です。幼稚園からの要望である木育の場として整備するにあたり、幼稚園が培ってきた歴史を具現化し、地域に発信する施設となることを目指しました。
幼稚園からは「蔵」と「格天井を含めた茶の間」の意匠を残したいという要望と、ランチルームとしての大空間が求められました。私たちはH型の木造家屋を南北に分断しそれぞれを別の手法で改修することを提案しました。南側家屋はランチルームとして広い空間を確保するため、瓦・葺き土、不要な土壁や仕上を撤去して建物の軽量化を図ることで、既存の垂れ壁で必要な耐震性能を確保し、耐力壁の不要な空間としました。仕上を撤去した木造家屋の軸組が現しとなり、その軸組全てを包み込む様に鉄骨造で増築しています。屋根の瓦・葺き土を撤去し屋根が無くなったことで建築基準法上の建築物ではなくなったこの軸組を、私たちは新たに遊具として捉え直し、将来的には遊具用のネットを貼るなどして屋内遊具として使う予定です。北側家屋は既存建物を再利用し、耐力壁や基礎の補強などを施して耐震性能を確保し、調理室やトイレ、倉庫等の小割りの室を配置しました。
木造のフレームを現しにした事で、伝統的な木軸構造と園児が直接触れ合える新しい木育空間が生まれました。木造の柱が点在し新旧の建物が共生する境界の曖昧な建物は、多様性に満ち、子どもの好奇心を刺激し、豊かな感性を育む環境を作り出します。地域の方々にも道路側からガラスのカーテンウォールを通して内部のアクティビティを見ることができる視認性の高い計画としました。