SRC造一部RC造 地上8階/21住戸
<計画のポイント>
1.増築を行わない改修計画
昭和48年に建設された築47年の既存建物は、構造耐力、容積率、高度地区が既存不適格となっている。そのため、既存不適格を維持すべく、改修計画は増築を伴わない、大規模模様替え及び用途変更とし、確認申請を提出し、再度検査済証を取得した。
2.耐震補強
既存建物は旧耐震の建物であるため、耐震診断を行い、袖壁補強、外壁の開口閉塞、屋上階段室塔屋解体及び新設の吹抜による軽量化により、最もIs値の悪い5階はIs値が0.40→0.83に向上し、新築同等の耐震性能を確保している。また、民間の審査機関である日本建築センターの構造評定を受け、第三者機関のお墨付きである耐震診断評定書を取得し、耐震診断及び補強設計手法の妥当性・安全性を確保している。
3.耐用年数算定
銀行から融資を借入れる目的として、耐用年数調査を行い、既存建物の耐久性能を評価している。調査内容としては、既存躯体からコンクリートコアの供試体を採取し、その供試体を用いて圧縮強度試験、中性化試験、含水率試験等を行なった。その結果、既存躯体の耐用年数は100年超と評価される結果となった。
4.CO2排出量削減
リファイニング建築は既存躯体を再利用し、補強及び補修を行いながら今後50年の使用を想定しているため、CO2の排出量を大幅に削減することが可能であり、カーボンニュートラルな社会を実現する上で重要な手法である。同規模の新築と本リファイニング建築の建設時のCO2排出量を比較した場合、概算で65〜70%のCO2排出量を削減できる結果が得られている。
<計画のコンセプト>
本計画は建物の東西側にボイドを2箇所設け、このボイドにより、法規・環境・構造・意匠が一体となった合理的な計画となっている。
法規について、改修後の建物は避難のための2m角の窓先空地が必要となる。そのため、建物東側に新設の吹抜を設け、窓先空地を兼ねている。また、この建物は8階建の建物であるため、2以上の直通階段が必要になり、建物の西側に2つの階段を設けている。
環境について、東側の新設の吹抜及び西側の開放率の高い階段は建物の環境性能向上に寄与しており、東側のボイドは専有部内の換気量を向上させると共に、吹抜からの採光により、明るさを確保することで設備機器に頼らず、居住空間の快適性を向上させている。西側のボイドについても、共用部内の換気量を向上させ、専有部のみならず、共用部の快適性も向上させている。
構造について、既存のスラブを解体して形成された2箇所のボイドは建物の軽量化に貢献しており、耐震性能向上にも寄与している。
意匠について、北側外観は、既存及び改修後の建物の風解析の結果、ボイドの効果により、中間期においては、外壁の凹凸が室内の換気量向上に寄与する結果が得られ、その結果に基づいて計画した合理的なファサードとなっている。